LIMINAL
Salone del Mobile. Milano / Salone Satellite 2024
境界が曖昧な引力の入り口
LIMINAL(リミナル)」は、「中間領域」「感知できるか否かの境目」を意味する。
本作は、利便性や機能から距離を置き、空間にささやかな輝きを添えるアートワーク。サイズの異なるリング状の金属製パーツが左右一列に連なり、空間に曖昧な輪郭を描き出す。壮大なスケールのグラデーションと、時折見せる微かな輝きが、空間と時間を超えた風景やシンボルを想起させ、静かな引力が生まれる。
その引力は決して強引な力をもたず、人々は自分がその作品の元に惹かれていることすら気がつかない。水平線を眺める時間のように、陽の光がチラチラと反射する水面をただただ見つめる時のように、自分の意識の輪郭を鈍らせる。具体的な機能を超えて空間に輝きを添え、場の境界を曖昧につなぐインスタレーション。
[デザイナーコメント]
人は何に惹かれるのか。人を惹きつけるものは何か。
以前から出雲大社の「大しめ縄」という存在が気になっており、私は出雲へ赴いた。全長約13m、重量5.2トンに及ぶ。その壮大な迫力もさることながら、この象徴的なフォルムの奥底へと吸い込まれる「引力」そのものが気になっているという事に気が付いた。ものづくりをしているなかで、時に強い引力を感じる存在に出会う。そして、日常の中の何気ない出来事や、見過ごされるものの中にも、この引力は隠れている。それは漆黒の暗闇に吸い込まれるような強引なものではなく、潮の満ち引きのように心地よく穏やかで、時折純粋な煌めきを見せ、いつの間にか包まれている。そんな「夢現(ゆめうつつ)」の中に存在しているのではないか。今回は、根源的な魅力と引力を秘めた「風景」のような存在をつくりたかった。その風景の奥に広がる想像の地平の更に奥を覗いてみたい。人が何かを見立てることができる”余白”のある空間が人を惹きつけ、開かれ続ける引力の入り口なのではないだろうか。その奥に、ただただ広がる物質の存在しない時間を表現できれば嬉しい。
Photo by Ryohei Maehara
Milano Salone / Salone Satellite 2024
Material : Steel, Aluminum, LED
SIZE : w6000 × d600 × h600mm
LIMINAL / 2024
Atsushi Shindo